Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
「裏の公園で待ってるわ」

どこかで、聞き覚えのある、声。

以前、これと似たようなことが、あった。

弾けたようにサラは走り出す。
アパートはすぐそこだが、全速力で走った。

───嫌な予感がする。

アパートの入口に入る。

───嫌な予感がする。

階段を駆け上がる。

───嫌な予感がする。

サラ「ハリー!!!」

バーン と勢いよく玄関をあけ急いでそのままリビングに入り、電気を点ける。



かくして。



嫌な予感は、苦く絶望的な現実を引き寄せた。

両の手から買い物袋が床に落ちる。

膝から崩れ落ちる。

絶望で抱えた頭が真っ白になる。

一瞬何がどうなっているのか、どうなっているのが何なのかわからなくなる。

目の前の現実を受け入れたくない。

こんな哀しいことが繰り返されてはならない。

だって───。

こんなに悲しい事は、四年前にもあったのだから。

サラ「い、いや………………いやあああぁあああぁぁあああああああぁぁぁああぁあぁああぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!!!!」

今まで一番大きな、悲痛な叫び声があがる。



既に冷たく、動かなくなった上半身をデスクに寄りかけたまま、開ききったハリーの黒い瞳が、静かにサラを見つめていた。
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