Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
目の前の少女はサラであってサラではなかった。

いや、サラのはずだが、どこか違う。サラと寸分違わぬが寸分違う少女を前に、ハリーは後ずさりした。
それと同時にサラのような少女は一歩ずつハリーに近づいて来る。

ハリー「誰だ君は!?……サラじゃない!?」

しかし目の前にいるのはサラだ。
その髪型、容姿から瞳の色、喋り方までサラのはずなのに、頭がそれを否定する。

───逃げなければ。ここにいては危ない。

そんな思考を遮るように、少女はハリーの目の前で立ち止まり、ハリーが知っているサラの声で、なまめかしいほど魅惑的に囁く。

「フフッ、貴方こそ何を言っているの?さっき自分で言ってたじゃない……………………サラ、って……」



サラはハリーの待つアパートまでの道のりを走っていた。

ハリーをぐうの音も出ないようなメニューの料理を作るため、半ば楽しみながらあれこれレシピを思い浮かべ、目的の材料は全て買い揃えたのだが、偶然通りかかったスーパーで特売セールをやっていたのを発見したのが遅くなった最大の理由だった。

予定よりも多めの買い物をしたサラは重たい荷物を両手に、小走りにアパートへと続く一本道に差し掛かっていた。

サラ〔遅くなっちゃった。ハリー怒ってないかな。うぅっ、またあのみつあみはやだよぅ〕

みつあみとは、以前サラがハリーの愛用のコップの二つ目を割ってしまった時、怒ったハリーがサラの髪を無理矢理みつあみにしたことである。

当然、ハリーに髪の結び方の知識などなく、その時の髪の痛みならぬ傷みといったらなかった。半日手入れしても直らないくらいだった。

アパートまでもう少しといったところで、誰かと擦れ違った気がした。何故なら、その擦れ違った誰かが、サラに話し掛けたのを聞いたからだ。

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