Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
───私を怒らせないで!

ぱん、という音が袋小路にこだまする。
ホームレスだったものは仰向けに倒れ込み、そのまま動かなくなった。

───手慣れてきた。

眼を使って人を殺すことに。
躊躇いとか、元々なかったけど、今の私には人を殺すことさえ呼吸に等しく簡単な行為だ。
だって、憎むだけで憎んだ対象が壊れるのだ。警察に捕まっても、そんなの科学的に説明できないだろうから逮捕などできないはずだ。
そんな事を考える自分に恐ろしさを感じながらも、サラは八年前と同じ場所にしゃがみ込んだ。何もせず夜空を見上げるサラの胸中には今、ある一つの思いがあった。



───死にたい。



実際もう、何もかも───どうでもよかった。

ここに来るまでに、サラはカリフォルニア中をさ迷っていた。

行くあてもなく、頼りとなる人もいないままサラは歩き続けた。
そんなある日、サラは色街にさしかかる。周り中風俗やクラブがある中、サラはフラフラと歩き続ける。

周りの店は顔のいい男が女性に声をかけたり(当然サラも声をかけられたが無視した)、露出度の高い服を来た女性が側を通る男性サラリーマンなどを誘惑したりしていた。
周りにある変な店など眼中になかった。まだ歩き続けた。
少し疲れたので休憩することにした。
赤い屋根の建物の、閉まっているシャッターの前に腰を下ろす。
しばらくぼーっとしていると、太ったケバい娼婦がキンキンとやかましい声で怒鳴り散らしてきた。
どうやらサラのことを新米の娼婦で、自分の場所を盗ったと勘違いしているらしい。

娼婦が何か叫んでいるがサラには何も聞こえなかった。
しかしそれでも娼婦はしつこかった。
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