Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
いや近くから見ても遠くから見ても悪いことにしか考えられないが、厄介なのはそれを誰も問題として取り上げていないことである。

ストリクト自身「あの人物は私が教えた」程度の自慢はしているだろうが、事実立派に育てているわけだし、生徒本人もそれを誇りとしている。そこに一つの曇りもない。
ないはずなのに何だろう。

目の前の女を見ていると背筋が寒くなる。
生徒にそこまで思わせるほどなら、テロを起こそうと思わせられるくらいの暗示をかけることができるのではないだろうか。

いや、そう聞いたりしたらこの人ならやりかねない。
欲望のためなどではなく、ただ名声を上げるために生徒を優秀に育てる教員なんて前代未聞だ。

唯一の救いは大統領の息子などが彼女の教育を受け、”ストリクト色”に染まらなかったことくらいか。
もしそんなことがあればストリクト・ヴィアムにとって世界征服などは容易いことになってしまう。

ストリクト「ああ、そういえば大統領の息子を教えてくれという話がありましたね」

………遅かった。

ストリクト「まあ面倒だったので断ったのですが」

……助かった。
世界は、たった一人の独裁者の気まぐれによって救われたのだ。ストリクトとしては、大統領の息子を教えるという話の部位に、サラの驚く顔が見れると思っていたのだが、サラのイマイチな反応につまらなさを感じながらも、話を続けることにした。

ストリクト「ところでサラ。私は明後日出張で日本に発たねばならないのですが、貴女も来ますか?」

サラ「え?」

突然の提案に、未だ世界の安寧を危惧していたサラは戸惑ってしまった。

サラ「日本……ですか?」

ストリクト「そう。日本です。どうですか?」

興味はあった。
小さいながらも今や世界の企業や財界でもトップクラスに立つ国、日本。

戸惑いより何より好奇心が勝り 行きます と言ったサラだったが、既にストリクトが二人分の航空チケットを手に入れていたことを知ったときはさすがに開いた口が塞がらなかった。
というか、自分の思考を完全に読まれている点についても、恐ろしさを感じざるをえない。

当日になりフランクフルト空港に着いた二人は大型の荷物を預け、座席を探しに機内を歩き回り、見つけてシートベルトをつけて離陸までの時間を待つのみとなった。

離陸前にサラは手提げのバッグから一枚のCDを出して眺めていた。

CDの名は『Shower The Moon Light』。

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