Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
完璧なまでの英語は、ぶつかった少女の口から発せられたものだった。

改めて正面から向き合うと、その少女のとても美しい出で立ちに目が止まる。

年齢はサラとおそらく同等。

スラリとわずかに揺れる綺麗な黒髪はサラに負けずとも劣らず。

大きな麦わら帽子にサングラスで顔はよくわからなかったが、細く整った輪郭からは並の美女でないことがはっきりわかる。

麦わら帽子とサングラスでこれなのだから、素顔はどれほどの国宝級なのか。

しかしそれだけではない。
顔立ちばかりに気をとられて気付かなかったが、プロポーションもかなりのレベルであった。

赤と黄色のコントラストがかかったアロハシャツと、黒い年代物のジーンズに包まれた、肩から腰にかけての見事な凹凸。

大人の雰囲気をかもし出すほっそりとした肢体は、滑らかで雅な色味を帯びている。

どこかのファッションモデルかと間違うほどの美貌と存在感。

あと、確実にウエストでは負けていた。

少女はぶつかったサラに文句を言うでもなくテキパキと落し物を整頓し始めた。
そんな手作業までも優雅に見せる少女が恥らい混じりに話す。

「こちらこそごめんなさい。少々急いでいたものだから。
!……あの、その眼は……」

片付けの途中でサラと向き合った少女は、何かに気付いたようにサラの顔を凝視……しているかどうかはサングラスでわからなかったが、二人の間に妙な沈黙が流れる。

サラ「え?」

「あ、ううん。何でもないんです。これからはお互い……気をつけましょうね」

自分の荷物をまとめて、少女は目的の搭乗口に入っていった。

その時、少女が小さく口ずさんだ歌を聴いたサラは、ハッと少女が去って行った搭乗口を見たが、少女の姿は既に消えていた。

少女が歌っていた歌は間違いなく、サラが学園祭で歌う予定の歌。

『Shower The Moon Light』だった。

サラは未だに荷物を片付けておらず、床に座り込んだまま少女の去って行った方を見ながら、少女の最後の言葉を思い返していた。



「……気をつけましょうね」



その部分だけが妙に。
妙に耳に引っ付いて離れなかった。
あの時、確かに少女ではなく別の誰かが喋ったような気がした。
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