Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
ストリクト「……不思議と、貴女に似たような娘でしたね」

いつの間にか背後に立っていたストリクトが、やはりサラと同じように少女が去った後の搭乗口を見ていた。

サラ「あ、すみませんストリクト先生。すぐに片付けてから行きますので」

ストリクト「その必要はありません。ゆっくり落ち着いて片付けなさい。貴女が転ぶなどして時間が潰れるのも想定内です」

あわてて片付けを再開するサラを横目に、ストリクトは冷静に答えた。

やはりストリクト先生は色んな意味で恐ろしい、と改めて実感したサラの脳裏には、もう少女の影はなかった。

ストリクトの用事が済み、しばらく日本に滞在していたサラ達は、日本を観光することにした。
観光を続けているうちに日本語にも慣れたサラにある日、ストリクトが日本の介護福祉ボランティアの参加を勧めた。

生体医学の良い経験になるだろうと、快く引き受けたサラは、その翌日から介護ボランティアに数日間参加することになった。

ところが、予想もしなかった出来事が起こる。

高齢者ばかりの介護センターで、サラのように若くて美くしく、しかも外国人はとても人気があった。

体の不自由な高齢者達にマッサージを施したり、健康食を作ったりと色々していたサラは、ある日一人の女性高齢者の言葉を聞いた。

「私の体の中には悪いガンがいてねぇ。今のお医者様でも治せないらしくてね。
……とうとうあと一ヶ月って、言われてねぇ……」

ベッド上の暮らし同然の生活をが続き、寂しさ混じりに話す女性はすでに死後の世界を見ているようだった。
女性の話を聞いていると、サラは何だかいたたまれない気分になってきた。

「まぁ、もう八十年も生きているから、何も後悔とかないんだけどねぇ。
子供も孫も帰って来ないし……。
……でも、いざ死ぬよって言われるとねぇ……………どうして人っていうのは、死ななきゃいけないのかねぇ……」

何故人は死ななければならないのか。

何故人は死を避けられないのか。

わかっていなかった。

何も。

たくさんのシワを顔につくりながら咽び泣く女性の話を聞いていると、サラまで目が潤んできてしまった。

数えきれないほどの命を奪っておきながら。

数えきれないほどの死を見てきたというのに。
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