ONLOOKER Ⅲ


「だって、頭にくるじゃない」


これ以上ないほど深く俯いた里田は、その不自由な姿勢のまま、ぽつりぽつりと話し続けた。


「持って生まれた美貌と、家柄と、権力と。成績も、大した勉強もしてないのにいつも学年首位だし、生まれつきの運動神経まであって……」


自分では特に努力もせずに周りからちやほやされ、慕われ、いとも簡単に憧れの存在にまでなれる彼女が、その上、同じく憧れの対象である准乃介たちにまで大切にされる彼女が、羨ましくて羨ましくて、その感情はいつしか恨みに変わっていた。

自分だって、元々の顔立ちがもっと良かったら、元々の要領がもっと良かったら、もっとお金持ちで由緒ある家の娘だったら。
きりがないのは解っていても、考えずにはいられなかったのだという。

溜まりに溜まった鬱憤を吐き出し尽くすように、低く呟く里田を見て、口を開いたのは、直姫ではなかった。


「あなたじゃ、どんなに生まれつきの才能があっても、紅ちゃんみたいにはなれないよ」


面と向かって罵詈雑言を並べ立てられているのと変わらないような状況で、膝の上で揃えた自分の拳だけをずっと見つめていた紅が、顔を上げる。
視線は、隣に立つ少女に向かっていた。

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