ONLOOKER Ⅲ


そして、彼らがどことなくやるせないような表情を浮かべている中で、彼女だけは追い詰められ、余裕をなくしていた。
ここで余裕をなくすことがほとんど自白のようなものだということは、気付いているのだろうか。
口調も表情も、苛立ちをあらわにしている。


「なに言ってるの!? そんなの記録してたわけでもあるまいし、なんの証拠にもならないでしょ!? それともあなた、いちいち数えてたとでも言うの!?」


行動パターンでいうならば、反撃と黙秘、里田はどうやら前者だったらしい。
普段のおどおどした様子は、微塵も見られない。
だが、苛立ちの矛先はまったく支離滅裂で、もはや論題がずれていることにさえ気付いていないようだった。

しかし、対峙する少年のような少女は、小さく首を傾げた。
そして、なんの躊躇いもなく、言う。


「え、記録ですか? それなら、実はこの部屋、防犯用に監視カメラが設置されてるんですよ。それを見れば、そのくらいすぐにわかりますけど」


けろりとして言ったその言葉に、紅と准乃介だけがなぜか過剰な反応を見せる。
慌てた様子に気付いたのは聖だけだったが、彼も目を丸くしただけで、唇を引き結んだ。


「本当にご覧になりたいですか? どのタイミングで右上を見ていたのか、も」
「それ、は……」
「この部屋に入ってからご自分がどんな顔されてるか、見てみるのもいいと思いますよ」


目を見開いて直姫を見つめていた里田は、やがて瞼を伏せると、小さく「いらないわ」と言った。
追い詰められたような、真っ青な顔色をしていることを、自覚していたのだろうか。
言葉だけなら、冷静だったのだ、ついさっきまでは。
ただ、表情はずっと、やましいことがあると白状し続けていた。

とにもかくにも、悠綺高校全校生徒の憧れと言っても過言ではない石蕗副会長へのいやがらせ事件は、ついに動きを見せはじめていた。
「だって、」と里田が呟く。

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