ONLOOKER Ⅲ


「こういう時ね、何も言わないのが一番だめにょろよ?」
「……じゃあ、正解は」
「正解ねー。その聞き方、直ちゃんいかにも優等生って感じだにゃー」
「すいません」

今度こそ謝ったが、この判断は思わずなどではなく、理由を聞かれて答えられると思ったからだった。
案の定、「どして謝るのかにゃー?」、恋宵はそう小首を傾げる。
彼女ならば必ずそう聞くだろうと、読んでいた。

「恋宵先輩、嫌いなんでしょう? こーゆうの」
「あたし文系だもん。数学じゃないんだから……答えが一つなんて面白くない」

少しむくれたように唇を尖らせる仕草が、いじけて拗ねた子供の様子を思わせた。
いつもの妙な喋り方も芝居がかった気の抜けた振る舞いも、少しずつ剥がれてきている気がして、直姫は核心に触れる準備をする。

「自分は、無理して喋ろうとしないのもありかと思ったんですけど」
「……今直ちゃんの言いたいことは、わかるよ」
「なら話が早いですね」
「答え合わせはいらないの?」
「してみますか?」

口許だけで笑ってそう言った直姫に恋宵は、わぁ生意気そーと、母親とそっくりの笑顔を浮かべて見せた。


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