ONLOOKER Ⅲ

覚悟



Inoの新曲発表が、ついに翌日に迫っていた。
大事になる前に騒動も解決して、恋宵にもほとんど何の実害もなく、これで一件落着かと、事情を知る誰もが思っていた。
しかし、嵐のように生徒会室に乗り込んでくることから始まって、嵐のように引っ掻き回し、嵐のように過ぎ去って行った山崎乃恵が、最後に起こしたもう一波乱を、彼らはその日の朝、知ったのである。

「直姫、大変だよ! 山崎さん、引退するんだって!」
「え!?」

血相を変えた真琴が手にしていたのは、今朝の朝刊と、悠綺高校の校内新聞、通称『悠スポ』の号外紙だ。
朝刊には1面に『ノエルのプロデューサー逮捕 盗作していた』の文字が踊っていて、続く2面、3面までその話題が事細かに報じられている。
例によって例の如く遅刻ギリギリに起床した直姫は知らなかったが、ワイドショーでもインターネットのニュースでも、今朝はこの話で持ちきりらしい。



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