私立聖ブルージョークス女学院
 中に入って席に着き、綾瀬先生と向かい合って座る。五分ほどでそれぞれのお茶のカップが運ばれてきた。普通料金でも一杯500円だけあって、僕が普段飲んでおり紅茶とは別物のいい香りと味だった。
 僕のティーカップとソーサーは縁を金で覆った、カップの横とソーサーの周辺部に鮮やかな青と緑の模様が描かれた物。綾瀬先生のカップを見ると……あれ?どこが違うんだ?何かが違うはずだと思ってじっと見つめていたら、それに気づいた綾瀬先生がポッと顔を赤くした。
「もう、いやですわ、片山先生。そんなに見つめられたら恥ずかしいじゃありませんか」
 あ、いかん。この人に変な期待持たせると後が面倒だ。僕はあわてて否定する。
「あ、いえ。見ていたのは先生のカップですよ。僕のとどこが違うんですか?」
「あら、全く同じカップのはずですわよ」
「え?でもさっき、名器料金を選んだのでは?」
「ええ。美人のさらに上の」
 僕は黙ってティーカップを置き、そのまま猛然とドアの外の受付にダッシュした。そして名器料金のメニューの紙を取り上げた。
「この料金は禁止」
 名取千尋が唇をとがらせて抗議する。
「ええ!どうして?それ、一番の売れ筋なのにぃ~」
「やかましい!美人料金まではシャレで済むが、よりによって名器とは何だ、名器とは!」
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