私立聖ブルージョークス女学院
 どうでもいいけど、くだけ過ぎじゃないか、この先生?やがて彼女は、立ちあがって僕の方にぐぐっと近づいて来ながら、妙に色っぽい声で言った。
「お聞きだと思いますが、先生にはこの寮の三年生の中の何人かの生活指導を担当してもらいます。いやね、今時の小娘って油断なりませんのよ。それに女子校で男性の先生ってストレスいろいろですわよ。何かあったら、いつでもあたしが優しく慰めてあげますから」
 と言ってあからさまにウィンクが飛んで来たので、僕は適当に話を切り上げて逃げるように部屋を出た。
 ドアを外側に向けて開けると、廊下に三人の生徒らしき少女たちが並んで壁に耳をあてていた。ううん、お約束だな。
 そのうちの一人、髪をツインテールに両肩に垂らし、クルクルと縦ロールの形巻いた子が、あからさまにクスクスと笑いながら僕を見ながら言う。
「あはは。女子校の寮監なんて男と出会いなんてないからね。先生、食べられちゃわないように気をつけなよ」
 なんか、言葉づかいが荒っぽい感じだな。まあ、名門校とはいえ中にはこういうタイプもいるか。
「こら、明日香。仮にもこれからお世話になる先生にその言い方は失礼であろう」
 真ん中の背の高い子がそう言って彼女をたしなめる。
「失礼いたしました。わたしは真田幸と申します。ここの寮生で先生のご監督をお受けする事になっております。以後お見知りおきを」
「あ、いや、こちらこそ。片山左京です」
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