私立聖ブルージョークス女学院
 立派なあいさつだが、なんかこっちは言葉づかいがちょっと馬鹿丁寧過ぎる、というか時代がかっているな。長い髪をきっちりポニーテールに結んで、何と言うか雰囲気が凛としている。身長170センチの僕に近いから、女の子にして背が高いせいか、サムライみたいな雰囲気だ。
「ちょっと、ユキ。時代劇みたいなしゃべり方するから、先生びっくりしてるじゃない」
 三人目の、こっちはすごく小柄な普通のツインテールの子がそう言い、僕に向かってペコリと頭を下げた。
「新しい先生ですね。わたしは名取千尋と言います。よろしく!」
「ああ、こちらこそ、よろしく」
 よかった。この子は雰囲気といい、しゃべり方といい普通そうだ。
 突然パタンとドアが開いて、綾瀬先生が首を突き出し「こらっ」と彼女たちに言った。
「この小娘ども!色気づいて新任の先生をからかってんじゃない!」
 少女たちはキャーと笑い混じりの声を上げながら小走りにその場を去って行った。
 それから僕は、学校からあてがわれたアパートへ行き、山積みの段ボールかた荷物を取り出し部屋を片付けた。部屋の窓からは、学校の敷地を取り囲む高さ3メートルはある、ブロック塀がすぐそこに見えた。
 確かに、あの年頃の女の子って異性とかセックスとかに興味を持つ世代だしな。その中で若い独身の男が僕一人というのは、いろんな意味で難しい状況があるかもしれない。うまくやっていけるだろうか?
 なんにせよ、明日から僕の教師としての人生がこの学校で始まる。
 ここは私立聖ブルージョークス女学院。夢多き乙女たちが集う場所。
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