キミニアイヲ.
父親は千鳥足で玄関に向かう。

そしてドアノブに手を掛けると、莉子の方を振り返った。



「親孝行な娘で嬉しいよ。
じゃあまたな…莉子」



ニヤリと笑うと、父親は出ていった。



「最低……!」



──最悪な人間だ!!


あんな奴、父親でもなければ生きている価値もない!



莉子は怒りにまかせて、手にしていた服を床に叩きつけた。


ボスッとベッドに座って頭を抱える。



「もう嫌……!」



逃げても逃げても、どこまでも父親は追い掛けてくる。


逆らえば暴力をふるわれる。



怒り、憎しみ、恐怖……


父親に対して、莉子はもうそんな感情しか残っていなかった。


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