真昼の月
「……はい」

「ああ……聖羅……げんき?」

声の主は言った。

「今、手首切ったところ」あたしは応えた。

「ふうん……やっぱり、死ぬ気? 」

「うん」

「そう……止めないけど。手首を切ったくらいでは死なないからね。僕としてはまだ、心中して欲しいと言う考えが消えてないから」

「ふふふ……」

あたしは笑った。

「なぜ、笑う? 」
相手は乾いた声で訊ねた。

「わかんない。笑いたいから笑ったのよ」

「聖羅? 」

「なに?」

「ぼくのこと、好き? 」

「わかんない」

本当にわからなかった。あたしは今までだれかを好きになったことなんてない。だれかに好かれた事もないと思う。

 もし、それがあたしの思い違いでなければ、親だってあたしを好きだとは思っていないに違いない。もしも、母親があたしを好きなら、あたしを置いて若い男と出ていくなんてことはしなかった。母は本当にあたしを憎んでいた。あたしができの悪い子どもだったから。
 
父親の暴力から守ってあげる事ができなかったから。

でも、わかって欲しい。本当はママを助けたかったんだよ。でも、あのときは小さすぎてどうしたらお巡りさんを家に呼べるかなんてわからなかったの。

嘘。 言い訳だ……ともうひとりのあたしが思った。
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