真昼の月
真理子さん
ドアのチャイムがなり、インターホンから「こんばんは」という女の人の声がした。

「はい」と父は返事をして玄関に出た。

「遅くなりまして、ごめんなさい」

ストレートの髪を長くたらした、背の高いすらりとした女の人が、ドアの向こう側にたたずんでいる。

あたしはその姿に一瞬息を呑んだ。それほど綺麗な人だった。それが真理子さんだ。

1度、父と真理子さんが踊っているシーンをビデオで見たことがある。
カナリヤ色のドレスを着て髪をアップに結い、人魚のようにドレスのすそを翻しておどる彼女は同性のあたしから見ても、惚れ惚れするくらい美しかった。

「綺麗な人」

そう呟くあたしに、父は満更でもないように

「そうだろう」といった。

「鼻の下伸ばしちゃって、パパったらおやじだね」

あたしは そういって部屋に篭った。

なんともいえない変な気分だ。

女の人が綺麗なのはいいけど、あれが父の恋人なんてピンと来なかったから。

< 5 / 60 >

この作品をシェア

pagetop