lacrimosa
「…ゥ、ウー、」
堪えても堪えても、自分の中にこんなに水分があったのかと驚くくらいに流れる涙。
『な…か、ないで』
ああ、もう呼吸が荒い。
(…やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ)
もっとアンジェロの傍に居たいよ
(………!…………ア、)
ふわり、開いた手のひらの中で揺れる金色だったそれは、確実に光が弱くなっている。
(…なんで)
「アンジェロ…!」
急いで彼を見れば、そのブロンドの髪が次第に色を失っていく。
ゆっくり、徐々に。けれど確実に。
「…やだ、やだ、アンジェロ!」
『早く、変わる、前…にっ、』
はぁ、はぁ、と息も絶え絶えに必死に請う。
何が起こり始めているのか、サーシャにもわかっていた。
けれどその現実を受け止めたくなくてたまらない。
(…早く、早くしなきゃ)
でも、やったらアンジェロ消えちゃうよ?
(…でも、本当に、堕天使になっちゃう!)
いいじゃない、それだって。
(…だけど、アンジェロがこんなに頑張って、私にくれた羽なくなっちゃうよ)
―――無駄にナッチャウヨ
脳内で交錯した声が響く。
その間にも刻々と色を変えていく羽毛とアンジェロ。
(…アンジェロ、)
(…ごめんね、)