縁隔操作(えんかくそうさ)
 次のエスコートは2週間後、今回は駅の周り、エキスポセンター辺りをぶらぶら散歩してみた。まあ、この辺が唯一観光客が喜びそうな場所だ。ユリアはさっそくあれを見つけたようだ。
「あの、アキトさん。あの細長いのは何ですか?ずいぶん大きいんですね。まるで宇宙ロケットみたい」
「みたい、じゃなくて宇宙ロケットそのものスよ。H2とか言う、日本が初めて自力で打ち上げたロケットの実物大模型ス。ま、俺たちにとっちゃ大昔の話スけどね」
 数分歩いた所で、ユリアがまた感嘆の声を上げた。
「あら!古い映画で見たような、懐かしいお家がありますね。まだあんなクラシックな農家に住んでいる方がいらっしゃるんですか?」
「ははは!んなわけないでしょ。あれは『さくら民家園』つって、昔この辺によくあった農家を再現した物っス。中に入れますよ。行ってみます?」
「はい!それはもう是非!」
 この施設は土間の中までぐらいは入る事ができて、部屋の中を見る事ができる。農業を全部人間の手作業でやっていた時代の古い農機具や、水道もガスも無かった頃の台所、畳の部屋に今じゃ骨董品のタンスやら家具やらが当時そのままに並べてある。
 ユリアはしきりと感心していた。どうやらこんな古い農家を見るのは本当に生まれて初めてらしい。十分ほどで一通り見て回れる程度の展示施設だから、周りをぐるっと回って、またエキスポセンターの方へ歩き出した。
「ううん!やっぱり不思議な感じです。宇宙ロケットが見える所に、あんなレトロな農家が保存してあるなんて。わたし、一度でいいからあんな伝統的な家で過ごしてみたいんです」
「はは、趣味が渋いっスね。お!新型セグウェイの試乗会やってるみたいすね。行ってみます?」
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