妹神(をなりがみ)
 とにかくまず学校を出る事にした。まさかとは思うが、あの不良連中が戻って来ないとも限らないし。
 で、帰り道をそろって歩きながら絹子は俺と美紅の口から、美紅のさっきの不思議な力の事を聞いた。と言っても、俺も美紅の力を見たのは初めてだったんだが。
「へえ、沖縄ってリゾート地ってイメージと米軍基地の話ぐらいしか知らなかったけど、そんな神秘的な土地でもあるのね」
 絹子がまじまじと美紅の顔を見つめながら、しきりに感心している。俺も訊きたい事があった。
「なあ、さっきあの不良の番長を生き返らせたのも、ユタの力なのか?」
「生き返らせたわけじゃない……あれは『マブイグウミ』。肉体から抜けかけていた魂を元に戻してあげただけ」
「魂が抜けかけていた?幽体離脱みたいなもんか?」
「転んで頭を打ったショックで、一時的に呼吸が止まるほど肉体がダメージを受けた。それで魂が体からずれてはみ出した、みたいな……あのまま時間が経っていたらほんとに命にかかわったかもしれないけど、すぐ手当したから助かった」
「じゃあ、ユタでも死んだ人間を生き返らせる事ができるわけじゃないのか?」
 すると美紅は珍しく不快そうな表情をあらわにして激しく首を横に振った。
「ユタにもノロにだって、そんな事は無理。たとえアマミキヨ様でも死んだ命を生き返らせる事はできない!」
「アマミキヨ様?」
「あたしたち琉球神女が祭る女神。琉球の国を作った母なる神と信じている地域もある」
「おまえ、あの力を使ってた時、なんか別人みたいに雰囲気が違って見えたんだが……あれもユタの力なのか?」
「それはあたしにも自覚がない。だから自分では分からない。でも昔お婆ちゃんから聞いた話では、神があたしに乗り移っているから、なんだって」
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