妹神(をなりがみ)
 すると突然母ちゃんが立ち上がって窓のカーテンを開けた。ガラッとガラス戸を開けながら俺たちに向かって言った。
「忘れてたわ。今日はペルセウス座流星群が最初のピークじゃなかった?ほら、見てみなさいよ」
 俺も美紅も言われるままにベランダに出て夜空を見上げた。すると、確かにいくつもの流れ星が夜空を横切っていた。街の灯りであまりはっきりとは見えないが、へえ、東京の夜空でも結構きれいに見えるもんだな。
「そうだ。あたし、小夜子ちゃんに電話しよ」
 そう言って美紅は自分の部屋から携帯電話を持って来た。俺と母ちゃんはサッシの窓枠にもたれて、美紅はベランダの手すりに前かがみにもたれて、流星群を見つめていた。
 やがて電話が美紅の友達、小夜子ちゃんとか言う子につながって美紅が話し始めた。じきに沖縄へ行くという事、いや美紅の場合は帰る、かな?俺と母ちゃんが一緒だという事、最近東京でどうしていたか、とか。その年頃の女の子らしい会話をしている様子が美紅から見てとれた。どうやら相手の小夜子ちゃんというのは、久高島で美紅が幼い頃から仲良しだった子らしい。
「うん、今なんとか流星群、ていうのを見てる。東京の空って夜でも灯りがきついから、あんまりよく見えないけど」
 その美紅の様子を微笑ましく眺めていた俺と母ちゃんは次の美紅のセリフでその場にずるっと尻もちをついてしまった。
「ねえ、この流星群って沖縄にはいつ来るの?三日後ぐらい?」
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