俺の彼女はインベーダー
 もしそうなら、俺たちの地球は終わりだ。俺は自分でも顔色が真っ青になっているのを自覚していた。二尉はむしろ落ち着き払った口調で答えた。
「もしそうなら、全ては終わりね。もうなるようになるしかないわ」
 俺たち全員が食い入るように崖の巨人像を見つめ続けた。一縷の望みを込めて。しかしいっこうに動きだす様子はない。
 が、俺たちの背後からザバーン!という大きな音が突然響いた。あわてて振り向くと、岸近くの海面が見上げるほど高く盛り上がり、巨大な水柱が立っていた。そして海水が徐々に落下して行くその中からそれは姿を現した。
 それは二足歩行の恐竜のように見えた。ティラノザウルスとかいうのに似ているが、四肢がもっとずんぐりと太く、頭が小さく、全体にまっすぐに立っている点が違った。背中にはやけにでかい鰭みたいな物がずらっと並んでいる。その巨大生物は砂浜に歩いて上がりながら口を大きく開けて、背筋がぞっとする咆哮を放った。
「グゥワー、オーン、ウォ、ウォ」
 俺の横で桂木二尉が大きく息を呑む音がはっきり聞こえた。二尉は震える声で誰にともなくつぶやく。
「あれは……ジュラ紀から白亜紀にかけて極めてまれに生息したとされる、海生爬虫類から陸上獣類に進化する途上の生物!」
 ううん、なんかどこかで聞いた事のあるような説明だな。二尉が震える声で言葉を続けた。
「この時代には、まだ生き残りがいたのね」
 俺は小夜ちゃんに訊いてみた。小夜ちゃんも真っ青な顔で全身を震わせながら、俺の腰に抱きついて怯えていた。
「小夜ちゃん。魔神様というのは、ひょっとして、あの崖の岩の巨人じゃなくて、この巨大生物の事なのか?」
 小夜ちゃんは泣き出しそうな声でかろうじて答えた。
「ま、魔神様のお姿はあたいも知らないの。母さまもお婆様も見た事はないって」
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