俺の彼女はインベーダー
 その巨大生物はズシンズシンと地響きを伴う足音を立てながらゆっくりと海岸に上がって来る。そして周りを見回し始めた。
「ユミエルさん!」
 桂木二尉がユミエルに叫ぶ。この信じられない展開を茫然として見つめていた彼女ははっと我に返った。
「は、はい!」
「あなたのテレパシーで、あの巨大生物を誘導出来る?あの銀色の球体をあいつに破壊させるのよ」
「あ、はい、やってみます」
 ユミエルは目を閉じて両手を胸の前で合わせ、精神を集中し始めた。小夜ちゃんが俺の体から離れてユミエルの横へ行き、同じような姿勢を取った。
「小夜もお手伝いする!魔神様、悪いやつはあそこです。あの塔の上の丸い球です」
 どちらが効いたのかは分からないが、その巨大生物はゆっくりと例の銀色の球体が乗ったタワーに体を向け、やおらその方向に進み始めた。一歩そいつが歩くたびに俺たちの腹にまで響くような地響きが伝わって来た。
「私たちも後を追うわよ!」
 桂木二尉が俺たち全員に言って真っ先に走り出す。俺は小夜ちゃんをおぶって後に続いた。あらためてながめて見ると、恐竜以上に巨大な生物だった。地面から頭まで軽く30メートルの高さがあるだろう。
 動きはノソノソという感じだが、なにせ歩幅が長いから俺たちが走ってやっとついていける。海岸から例のタワーまでは意外と近く1キロ程度の距離だった。都合のいい事に町の真ん中を広い通りが貫いていて、タワーまで真っすぐ伸びている。その巨大生物はその大通りを通りぬけて行き、幸い町の人たちは路地に逃げ込んで避ける事が出来た。
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