俺の彼女はインベーダー
 俺のアパートの部屋に戻るやいなや、罵り合いに近い言い争いが始まったのは言うまでもないだろう。
「月に八万七千円だと!俺がもらってる仕送りと大差ねえじゃねえか!たったこれっぽっちの金でどうやって地球を征服しろって言うんだ?地球人をなめとんのか?お前の星の人類は!」
 そう怒鳴り散らす俺から身を隠すように、ラミエルは麻耶の背中にしがみついて繰り返していた。
「すいません……すいません……あの、あたしの星は資源が枯渇していて……金ともなると末端のあたしなんかに回してもらえるのはあのぐらいしか……」
 麻耶は全く無表情な顔で俺とラミエルの会話に割って入ろうともしない。まあ、金と聞いて欲の皮を赤色巨星並みに膨らませた挙句のあのオチだから、さすがのこいつも茫然自失しているのだろう。
 俺がいいかげん怒鳴り疲れて口をつぐんだ時、麻耶がぽつりとこうつぶやいた。
「人類史上……最低の侵略かもね、これって……」

 後で麻耶とラミエルが買いまくった服やら靴やらのレシートを合計してみたら、八万六千四百円!上野までの往復の電車賃が三人分で九百円。入って来た金が八万七千円。
 第一回地球征服作戦、締めて三百円の赤字。
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