shining☆moon‐私の王子様‐

開幕



「…ヴィンセント…シュナイザー」


言葉にしてみて、苦しくなるし、何か圧迫感が起こる。
身体がドスンと重力で下に行くような感覚がある。
身体も強張るぐらい、ヴィンセント・シュナイザーは恐ろしくて凶悪な人物であるというのかな。
ますます不安がつのる。

フレンは私の前に手を出し、真剣な顔でヴィンセントを睨む。


「ユリア、下がってて」

「…え」


フレンは何をする気なの?


「俺の後を追って来ないでね。…大丈夫」


何が大丈夫なの?
何も大丈夫な事は無いんだよ?
今から戦争になるかもしれないんだよ?

大丈夫だなんて言えないよ…。


「大丈夫…」

「………」

「大丈夫、俺がユリアを守るから…」


守る…?
フレンが私を守る…?
…守るなんて言わないで。
フレンの方が危ないんだよ?
私の事なんて放っておいて、いいんだよ。

だからね、フレン。

私を守らないで?


「…フレン」


私は昔の友達、親友、ライバルだったフレンとヴィンセントが争うところなんて見たくない。

止める。
止めてみせる。
私のこの手で。
こんなに小さい私だけど、フレンとかより小さくって戦力にならないかもしれない。
だけど、かもしれないってことはまだ可能性はある。
99%ができない確率だとしても、1%が私の希望だ。
できないってわかってる。
私はフレンを守れない。
だけど、私にできるならフレンを守る。

誰1人傷つけさせない。


フレンがゆっくりとヴィンセントの船に向かう。
その背中にはフレンの野望とプライドと過去の思い出を背負っている。
私はフレンのいらないもの、邪魔するものを退治したい。


そう思っていると私の身体は勝手に動きだし、ゾルヴァーナ王国対エルランドの攻撃の最初を飾った。


「オクターフィルゾン…!!」


ヴィンセントの足元の船の木床が歪み針になり、ヴィンセントに向かって飛んでいった。


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