病院にはボーッと椅子に腰かけている母を見つけました。


 そして、廊下の奥の方から妹が出てきました。

 不安な気持ちを隠すためなのか、妹は無理な笑顔を作りこちらへ静かに向かってくるのです。



 「入院しなくて大丈夫なの?」

 と聞いたら、



 「もう末期だから、生活に気を付けながら、最後の時を一番大事な人と過ごしなさいと、お医者さんに言われたの。」

 と私を見つめながら言うのです。



 小学校低学年の頃、奈央子が好きな男の子とチューしているのを、偶然見かけた私に、甘えるように「お母さんには言わないでね。」と言ってきた時の言い方と、どこか似ていました。
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