冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●87
 私もって…。

 腕を掴まれて連れて行かれる。こんなシチュエーションは、今日はもう2回目である。

 どうにもカイトのペースからすると、彼女の思考や行動は遅くてしょうがないらしい。

 強くて痛いくらいの力がかけられて、メイはついていくしかなかった。

 カイトは、外食をすると言った。

 この家で、彼女の作る食事はいらないと。

 食事の用意だけは、いままで怒らないでいてくれたのに、それすらも怒ってしまうくらい、あの服装が気に入らなかったのだろうか。

 それとも、やっぱり外食の方がおいしいと――

 いろいろと山のように考えてしまうのだが、どれ一つとして前向きで建設的な結果に結びつかない。

 特に、いまは引っ張られている状態だ。

 ちゃんとついていかないと転んでしまいそうで、彼女はたくさんの神経を裂かなければならなかった。

 ジャラッという金属のぶつかり合うような音がした。

 おそらく、車のカギだろう。

 いつも玄関のところに置いているのは、彼女も知っている。

 ドアが開いた瞬間、冷たい空気が押し寄せてきた。

 外に出てしまったのだ。

 しかし、足は止まらない。

 そのままカイトは歩き続けた。

 心配になって振り返ってしまう。

 カギもかけないどころか、開けっ放しなのだ。

 その玄関が、どんどん遠くなっていくのが分かった。

 この敷地外に出たことくらいある。

 ハルコと一緒に、昨日買い物に行ったのだ。

 しかし、その時とは違う条件があった。

 今度は、カイトと一緒なのだ。

 彼と一緒に車に乗ったのは、初めてここに来たあのタクシーだけ。

 こうやって、外食という理由はさておき、2人だけで出かける日が来るなんて想像だに出来なかった。
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