冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 カイトは知っている。

 キャラクターに人格があればあるほど、その死は強烈になり、プレイヤーを惑わせ悲しませる。

 殺す時にためらわせる。

 彼は、その死を壮絶にするために、人間側のキャラクターたちに人格を植え付けていった。

 計算好きの副参謀。

 力はあるが、扱いを知らないためにいろんなものを壊して回る歩兵。

 占いが好きだが、戦の度に自分が死ぬという占いを引き当てる弓兵。

 同じ部隊の彼女に結婚を申し込もうとして、空振りばかりする騎馬兵。

 そんな風に、どんどん命を吹き込む。

 吹き込まれた命は、化け物に食われたり、化け物を食った瞬間に、人間としての尊厳を踏みにじられる。

 悲鳴や傷は生々しくなり、死は絶望という音になる。

 ゲームにはBGMはない。

 しかし、彼の右脳では重いドラムの音がずっと響いていた。

 下腹を震わせるほどの重低音が、頭の中で反響し続ける。

 何度も、同じキャラクターを化け物に食わせるテストをした。

 何度も何度も何度も。
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