冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 しかし、女子社員の評価は、また別である。

 怒られるのがキライな彼女らにしてみれば、社長の仏頂面と、シュウのロボットぶりは、評判がよくなかった。

 彼らは二人で会社を起こし、社長と副社長の名前を欲しいままにし、おまけに――ここが、彼女らの一番のポイントらしい――二人は、一緒に住んでいるのである。

 トドメは、どちらも独身な上に、彼女がいる風には、とてもじゃないが見えないこと。

 結果。

 よからぬ噂が立つ。

 ゲイ。

 世にも恐ろしい噂だった。

 これが女子更衣室やトイレや、アフター5の居酒屋などで、ゴシップたらたらに語られているのである。

 本人たちの耳に入ったら、とんでもないことだ。

 そんなことも知らないカイトは、企画会議に身が入らないままだった。

 クソッ。

 理由は分かっていた。

 あんな電話を自分が入れるハメになろうとは、思ってもみなかったからである。

 あんな電話――

 ハルコに入れた電話のせいだ。

 彼女にちゃんと説明をしておかないと、それこそ冗談ヌキで警察沙汰にされてしまいかねなかった。

 たとえ思慮深い彼女であっても、誰もいないハズの家に、見知らぬ女が1人でいたら、不審に思って当たり前である。

 気色の悪い笑いをしやがって。

 その悪態の相手は、ハルコである。

 何が、『そうだったんですね』だ。

 ムカムカ。

 思い出すだけで、頭に血が昇っていく。

 何がそうだったのか、勝手に納得するな、というところだった。

 カイトの指示を、全て黙ってうなずけばいいのである。

 無駄な笑顔も反応もいらないのだ。
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