不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生
有美の泣き顔を見ていて気が付いた。
全く泣けていない俺に。

悲しいのに、悔しいのに泣けないんだ。
涙が出て来ないんだ。


――俺って薄情者なのかな?


――何で……
何で泣けないんだ!?

俺はもう一度……
みずほの遺体のあった献花達を見詰めた。


あの日遺体の傍で、みずほのあじわった恐怖を感じて総毛立った。


(――そうだ……
あの時も俺泣いてなかったんだ)




――それでも俺は、みずほを愛していると言えるのだろうか?


自問自答を繰り返す。


――みずほー〜!!

俺はみずほを感じようとして目を閉じた。


でも目を開けた時にも涙は零れ落ちなかった。
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