それでも朝はやって来る
8 婚約者×略奪者
「ね、カナは…」

「ん?」


中庭でカナと朝子はお弁当を食べていた。


「その…えっと」


お弁当の卵焼きをつつきながら、なにか聞きたそうに、モジモジしている。


「えー、もしかして彼氏でもできた?」


何の気なしに、聞いた質問に朝子は顔を真っ赤にしていた。


「ちちちち…違うよ!!……えっと、そのぉ…」

「朝子ってさ、動揺するとどもるよね」


間髪入れないカナの突っ込みに、さらに吃りを増していく。


「あっ、わかった!さてはキスでもされた?」


カナは変な感が働くのだ。

慌てふためく朝子を尻目にドンドン質問を投げ掛けてくる。

悠里と契約とは言えあんな激しいキスをして、一番怖かった時に「必ず守ってやる」と言われ抱き締められた。

恋愛経験の乏しい朝子には、悠里の行動は少なからず自分に好意を持ってのことだと思いたかった。

ただ単に黄金率の体が欲しくて、あの情熱的な激しい瞳で朝子を見てくるとは思いたくなかった。

本人には間違っても聞けはしないのだから…

「男のひとって…好きでもない人と…キキキ…ス…出来るのか…な」



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