それでも朝はやって来る
「いきなり失礼ですよ、悠里(ゆうり)様。まずは、事情を説明差し上げて、朝子様の了解を得てからでないと…」

「わかってるってー、真楯(まだて)」


真楯と呼ばれたのは、先程の超美人さん。

長いまつげの奥に、黒い瞳がゆれる。

…綺麗…


穴が開くほど見つめていたら、クスリと笑われた。


「今時、長髪なんて珍しいですよね。僕も流行りの髪型にしてみたいんですが、何分家のしきたりなもので」

少し骨ばった綺麗な手で、サラサラと髪をすく。


「朝子様が、あまりお気に召さないようであれば、明日から髪を結いますね」


朝子は、首が引きちぎりそうなぐらいに、首を振った。


「そんなつもりじゃ…ただあまりに綺麗だったから…つい…見とれちゃって…」

「ありがとうごさいます」


真楯は深々と御辞儀をした。


「オイ!お前たち、俺の存在忘れてるだろ…」


悠里にそう言われなければ、真楯のことずっと見ていたかも…


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