君を探して
2人を降ろした電車は、再び、静かに動き始めた。

私の目の前には、空っぽになった2人分の座席……


電車のガタンゴトンという振動音とともに、昼間のチョコの言葉がリフレインする。

『ヤマタロなんてすぐにどこかに行っちゃうんだからね!』


イヤだ。

そんなの、イヤだ!


立ったまま、
空っぽになった座席を見つめたまま、

私は泣いていた。



ヤマタロ……お願い。


どこにも行かないで。

“オレ”のように、勝手に消えたりしないで。


他の女の子と楽しそうに笑わないで。

優しい目で見つめたり、肩を抱いたりしないで。



私以外の人を好きになったりしないで……!




涙と一緒にヤマタロへのいろんな気持ちがあふれ出た。


いろんな言い訳を重ねて押し殺していた想いを吐き出して、

「どうしよう」っていう迷いも取り除いて、


ようやく、私の心の一番奥に隠れていたとてもシンプルな言葉が顔を覗かせた。



それは。



「ヤマタロが好き」



そんな、とても簡単な言葉だった。

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