ヘンゼルとグレーテル
「せんぱぁーい」

列車の中のごみを箒で集めていると、新人の子に呼ばれた。

「どうしたのよ」

手招きされ、彼女のいる広い列車内の端のほうまで行く。

「……何、これ」

床がべしょべしょに濡れていた。広範囲だ。その液体の中にはきらきらと何かが光っていた。

「まったく!何よこれ!ワインじゃない!まったく、掃除は私たちがやるからって……」

「何でワインがこんなに?」

「どうせ外の男達が荷物を落としたんでしょう。掃除は私たちがやるからって……これだから男は嫌なのよ」

ぶちぶちと文句を言いながら床を掃除し始める。新人の若い女性もそれに続き床をモップで拭く。

何かが変だ。若い女性は思ったが気付かない。
キラキラと細かく光るのはワインが入っていた瓶のガラスだ。ただ割れたのではなく、細かく、細かく砕かれたガラスに気付かずに、二人の女性は綺麗に掃除をしていった。
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