シーラカンスの唄
重樹と呼ばれた目の前のソックリさんは、ふわっと笑って見せた。
「……久しぶり。」
「…………。」
ニセモノ…じゃ無かった。
大好きだった笑顔は、あの時と何も変わらない。
「……帰り?かな?」
「………うん。」
もしかしたら夢の続きかもしれない。
そう思えるくらい、普通に話をしている。
けれど。
間違いなく本人で。
この街にいるはずのない彼は目の前にいた。
「……時間あるならお茶でもする?」
重樹は駅から見える喫茶店を指差した。
「立ち話もなんだしさ。」
「………。」
コクンッ。
…と頷くのが精一杯。
悪い夢なんだろうか?
電車で寝てるだけ?
まさか。
…と思いながら、二人で並んで改札を出て、喫茶店に入った。
(やっぱり夢じゃない。)
夢ならば店員さんに見えるはずも無い。
だけど、店員さんは重樹からオーダーを取っている。
その様子を見ながら、私の頭の中では、どうして?が駆け巡っていた。
「朱香は?」
「あ…ホットココア…。」
「あとホットココア一つ。以上で。」
店員さんはオーダーを復唱して奥へと戻っていった。