アルバム
三年間通い続けた中学を卒業する。


楽しかったこととか、みんなで頑張ったこととか……。

いろんな思い出がある中学校。

大好きなみんなとも、お別れなんだ……。



早くも泣いちゃいそうな気持ちを抑えて、部屋のドアを開ける。



まだ、泣かないもん。

そう心に決めたら、不思議と足取りが軽くなる。



足を踏み外さないように、でも早足で階段を降りると、ニコニコ顔のお母さんが目玉焼きを焼いていた。



「桜が自分で起きるなんて、久しぶりね」



イヤミっぽいセリフだけど、笑顔を崩さずに言ってるところを見ると、お母さん、理由がわかって言ってるよね?



「卒業式、だもん!」


言い返す私の言葉に、お母さんが頷いた。


「桜も大きくなったわね……少し前まで、一人でトイレに行けなかったのに」

「そんなことないよ!」


お母さんもだけど……大人って、すぐに子供扱いしてくる。

もう子供じゃないのに。


「親からしたら、いつまでも子供なのよ。はい、目玉焼き」

「……ありがと」


私が気に入っているお皿に、アツアツ半熟の目玉焼き。

受け取った私は、いつも通り食卓についた。
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