三度目のキスをしたらサヨナラ
誰もいないリビングへ戻り、湯気の消えたコーヒーを飲みながら考える。


──ソウとの《ゲーム》。

昨日の1敗で、私が勝つ可能性は完全になくなってしまった。

あと1回の勝負を残したところで、私の1敗1分。

次の勝負に引き分けたとしても、1敗2分でまだ私の負け。
ソウに勝つことができれば、1勝1敗1分でようやく引き分けになる。

つまり、次の勝負でソウに勝たない限り、私の負け。

ソウは明日には地元へ帰ると言っていた。
私に残された時間は少ない。

──今日中に、ソウを泣かすことなんてできるの?


だけどその前に、ソウが昨夜彼女とヨリを戻していれば《ゲーム》そのものの意味がなくなってしまう。

だってこれは、失恋の傷を癒すための《ゲーム》なのだから。


私は多華子の置き手紙の余白にペンを走らせた。

《口紅、ありがとう。試してみたんだけど、私にはちょっと明るすぎるみたい》


──どう考えても勝ち目のない《ゲーム》。

それなのにどうして、私はまだその続きを考えているんだろう?


私は少し考えた後、余白に更に書き加えた。


《今晩はウーさんのお店に寄って帰るから、晩ご飯はいらないよ。先に食べてね》

そして。
紙の上に出番の無かったピンクの口紅を静かに置くと、私はリビングをあとにした。
< 127 / 226 >

この作品をシェア

pagetop