三度目のキスをしたらサヨナラ
だけど佐和子はその後すぐ、蒼太に何も告げないまま大学を中退して、実家へ戻ってしまった。

私と蒼太を別れさせたところで、蒼太の気持ちを自分に向けさせることは無理だと悟ったというのだ。

決して自分を愛してくれない男と一緒になることがどれほど辛かったのか──。

佐和子は、蒼太と別れ、1人で子供を産み育てることを決心した。



「多華子に言わせると、それも全部計算だって言うんだけどね。私にはそうは思えないの」

「どうして?」

「だって、そんなの悲しいじゃない。蒼太が選んだ人がそんな悪い女だなんて」

ソウが頭を垂れて呟く。

「ミナさんはお人好しすぎるよ──」




だけど、そんな佐和子の事情が蒼太に伝わらないはずがない。

陸上部の共通の知人から話を聞かされた蒼太は、その日のうちに佐和子の実家へ足を運んだ。

だけど、佐和子は決して蒼太に会おうとしなかった。

それでも蒼太は毎日佐和子の元へ通い続け、そして5日後、蒼太はようやく佐和子と顔を合わせることができた。

『俺と結婚してくれ』

開口一番、蒼太にそう言われた佐和子は、1人で立っていることができないくらい激しく泣き崩れたという。


──あの気丈な佐和子が泣くなんて、今でも考えられない。

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