【モテ期到来】
後半、三国紗夜香がコートに出て来た。
ボールをキープした私はドリブルしながら三国 紗夜香の真ん前に立って彼女を睨んだ。
思い切り彼女の顔スレスレからパスを出す。
「きゃっ!」と身を強張らせた三国 紗夜香の脇をすり抜ける時、耳元で囁く。
“…あんたなんかに太一は渡さない。”
聞こえたかどうかはわかんない。
でも後には引けない。
私は彼女に“宣戦布告”した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
その日の帰りに携帯の電源を入れた。
「げっ!!…なにこれ!」
着信5件。未読メール12件。
う゛…全部太一だし…。
「見たくね~…」
歩きながら携帯画面を見て眉間に皺を寄せる。
ふとその手元が陰って顔を上げた。
目の前に学ランが見えて、恐る恐る上を見上げる。
「…“見たくね~”なら見なくていいけど?」
眉をピクリと動かして見下ろして来る太一に冷や汗が噴き出す。