前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
と、熱弁暴走していた鈴理先輩がハタッと我に返り、こんなことをしている場合じゃないと手を叩いた。
早く帰らなければならない、なんたって今日という時間は長いようで短いのだから!
握り拳を作る彼女は、「大雅のせいで時間のロスだ!」べしと許婚の背中を殴ってそそくさと歩き出す。その際、しっかりと俺の腕を引いて。
「あーあ」おアツイったらありゃしねぇ、苦笑する大雅先輩に手を振って俺は鈴理先輩と正門を潜り、帰宅路を辿る。
いつもだったら車で送り迎えされる彼女だけれど今日は俺と徒歩。
申し訳ないことに四十分ほど歩かせることになるんだけど、彼女は嬉しそうに気にしていないと返事してくれた。
よっぽどお泊りが嬉しいらしい。
浮き足で歩く彼女はしっかりちゃっかりと俺と手を繋いで前へ前へと歩く。
こんなに喜んでくれるならまた次回も誘おうかな、第二回目お泊まり計画という気の早い計画を脳内でしていると先輩が視線を持ち上げた。
俺と視線を交わす先輩は、唐突に「寄り道をするぞ」と切り出す。
え、寄り道、とは?
瞬きする俺に、「鈍い奴だ」寄り道イコールデートに決まっているだろ? と彼女は物申す。
「この日のために」
ちゃんと空の通学路を隈なく調べたのだと熱く語る鈴理先輩は、まずは本屋からだと手を引いて右折してしまう。
俺の通学路を隈なく調べたってところにツッコミを入れるところなんだろうけど(だって隈なくって……)、そこは敢えて触れず、彼女のご要望に沿って本屋へ。
そこで鈴理先輩は大量の恋愛小説を手にし始めた。さすがは恋愛スキー。どんどん腕に小説が積み重なっていくんだけど。
「先輩。それ全部買うんっすか? 見積もって軽く十冊はありますけど」
「ああ、購入予定だ。すべて待ち望んでいた文庫本でな。あとは…、おっと忘れていた! 新作が出ていた筈だ!」
言うや否や先輩がとある売り場コーナーへ駆けた。
急いで後を追った俺は微妙な気分に陥る。
だって先輩が立ったコーナー、ケータイ小説コーナー、尤も攻めの参考書として用いられる本の前に彼女が立ったんだけど。
俺に持っていた小説を持ってくれるよう頼み、彼女は早速単行本に手を伸ばす。
で、購入予定の小説山に重ねた。
タイトルはふむふむ、『君がいた夏』なんか青春っぽそうだな。良かった、安心…、「これ等も追加だ」