前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


同刻、御堂家の茶室にて。


玲の父。
御堂源二は深い溜息をついていた。

どうしたのかと妻の一子が気遣うと、

「父から電話があったんだ」

複雑な面持ちを作って言う。

「え、義父さまから?」

瞠目する一子が恐々と用件を尋ねる。

「それがな」

玲に見合いをさせろという話なんだ。源二は二度目の溜息をつき、頭部を掻いた。

それは…、言葉を濁す一子に源二は困ったと腕を組む。


「父は次の後継者を一刻も早く決めてもらいたいみたいなんだ。玲の男嫌いはご承知の上だろうに」

「二十歳までに身を固めろ。それが義父さまの口癖ですものね。お相手は?」


「まったく分からない。勝手に決めてしまわれているようなんだ。弱った。父の命令には逆らえないしな。玲がなんというか」

 
刹那、茶室の障子が勢いよく開いた。

驚き返る二人の前に立っていたのは我が娘。

嫌悪感を滲ませている長女は、


「僕は見合いなんてしません!」


祖父の命令なら尚更です!
喝破してバタバタっと廊下をけたたましく走り去ってしまう。

「やっぱりこうなるよな」

玲の男嫌いの一因は父にもあるのだと源二は顔を顰めた。

「ようやく恋ができたのに」

どうしましょう、一子はもう溜息しか出なかった。


一方、玲は自室に駆け込み、畳まれた敷布団に飛び乗って怒りを噛み締めた。




「何が見合いっ…、クソジジイめっ。さっさとくたばればいいんだ」




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