前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「―――…へえ、だからバイトを探しているんだ。なんか、大変だね。空くんのところは。勉強だって大変だろうに」
翌日。
教室で無料求人情報誌を捲っていた俺に、そう同情してきたのはクラスメートのエビくんだった。
「そりゃ」大変かもしれないけど、もっと大変なのは親だし、生返事した俺は情報誌のページを捲った。
うーん、土日限定ってところはなかなかないな。
土曜日は補習が入ったりするからなるべく夕方から夜。
早くても昼過ぎに入れるバイトがいいんだけど、そう簡単に上手い話もなさそう。
居酒屋でもいいんだけど、あんまり遅くなると親がとやかく言うんだよな。
うちの両親はまだ誘拐の一件を引き摺っているから。俺も心配を掛けたくないし。
「いやでもさ」
やっぱお前偉いぜ、隣の席に座っているアジくんが俺に声を掛けてくる。
「勉強と生活を両立させようとしているんだからさ。偉いも偉いじゃんかよ。
それにこの学校はバイトに甘いから、担任にそのことを話して許可書を書けば、気兼ねなくバイトできるし。しようと思えばできるもんな」
「うん、担任の瀬能には今朝伝えたんだ。生活が関わってくるから、多少の考慮はしてくれるみたい。
俺、これでも全学費免除してもらっている奨学生だしさ。学業を疎かにはできないんだけど、生活のためなら少し甘めにみてくれるって。
補助奨学生の場合、学年テストは常に十位内には入らないといけないんだけど、二十位まで許容しておくって」
「うっはー。それでも厳しくないか?!
だって一学年五百人はいるんだぞ? この学校は名の通ったブランド校だしさ。
それなのに二十位以内っ、鬼だ!
でも空、いつも五位以内に入っているよな。名前しょっちゅう見る」
嫌味の如く頭がいいよな、アジくんが頭の後ろで腕を組んだ。
それだけ努力してるんだってアジくん。
これでも俺は毎日必死なんだよ。
鈴理先輩の激い攻めから必死に逃げているように、勉強面でも必死なんだ。勉強に関しては負けず嫌いってのもあるんだけどさ。
中学時代、塾に通えなかった思い出が俺を焚きつかせているんだ。