前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
日曜日。
大雅と鈴理にとって人生の岐路とも呼ぶべき、婚約式が今日となった。
場所は某一級ホテルの二階ホール。
そこを貸し切って行われる式会場には、昨夜から従業員の手によって美しく彩られていた。
円状のテーブルに真っ白なテーブルクロスを敷き、各々花が飾られている。
今頃名の通ったシェフが腕によりをかけてパーティーに出す料理をこしらえているだろう。
午後五時丁度から受付が始まり、招待された客人達が名簿に署名している。
六時過ぎに式を訪れた宇津木財閥の次女・宇津木百合子は、名簿に著名するとホテル内のラウンジで珈琲を飲んでいた。
一友人として、また財閥の友好を示すため、百合子は婚約式に招かれていたのである。
内輪だけの式であるため、彼女は制服姿だ。
これでもフォーマルな格好であろう。
正式な婚約式にはイブニングドレスを着なければならないだろうが、学生組の大半が制服で赴いている。
よって百合子の姿は目立つことが無かった。
「はぁ…」
百合子は重々しい溜息をついて、折りたたんでいた携帯を開く。
新着メールが一通。
中身を確認すると、友人の川島早苗が鈴理の様子を心配している内容が綴られていた。
まだ本人に会えていないため、その胸をメールして百合子は携帯を閉じる。
ソーサーに置いていたカップを手にとって縁に口をつけた。
物思いに耽っていたため、そのままの姿勢で暫し静止。
声を掛けられるまで動くことがなかった。
彼女に声を掛けてきたのは御堂財閥長女・御堂玲である。
相変わらず男装が趣味なのか、今日も彼女は学ラン姿だった。
「御機嫌よう」
綻んで向かい側の席に座る玲に、会釈して百合子も挨拶を返す。
「今日の君は笑顔が曇っているね。いつもは花のように可憐な笑顔を見せてくれるのに」
玲の口説きに百合子は苦笑した。
「そうですわね」
これがただの婚約式なら笑顔でしたでしょうけれど、目を伏せて吐露する。
ボーイに珈琲をオーダーした玲は無言で百合子の吐露に耳を傾けていた。
そう、百合子は素直に婚約式を祝えない心情にあったのだ。
友人の恋心を知っているゆえに。