前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
あ、そうそう時間が経つに連れて俺は自分の体の変化に気付いた。
毎日のように悩まされていた赤い斑点、つまりキスマークなんだけど、それが薄くなっていたんだ。
歯を磨いている時に気付いた。
消えそうになるといつも彼女がつけていたことを思い出し、俺は改めて現実を思い知らされる。先輩と俺は別れたんだなって。
いつかこの痕も消えるんだろうな。
俺達の関係が終わったことを知らしめるように。
そう思うと切なくなったけど、しょうがないって割り切った。
自分で選んだ道だ。
文句を吐く権利なんて俺にない。
こうして先輩と付き合う前の極々平穏な日々に戻った俺だけど、以前のように何も無かった学院生活を送ることもできなかった。
何故なら俺は鈴理先輩という確かな繋がりを持ってしまったから。
付き合う前の生活に戻った。
でも前とは別の生活に放り出された気分。
虫食いだらけの生活になったってのが表現としては適切かもしれない。
隣が妙に寂しいんだ。
いつもだったら隣にあたし様がいて、恋愛小説の話をしてくれたり、不謹慎発言を連発していたり、人のことをエッロイのなんだの言ってくれるのに先輩はもう隣にいない。
折角、頑張って貰ったケータイ小説文庫を消化しつつあったのに、その感想を聞いてくれる相手もいない。
なによりキスすることがなくなった。
俺、わりと彼女とのキスが好きだったみたいで時間が経つに連れて口寂しさを覚えた。
こんなことならもっかいくらいキスしておけばよかったな。
ただ恋人からお友達に格下げしただけなのに、それだけでこんなにも生活が変わってしまった。
俺の生活にどれだけ先輩が溶け込んでいるのか、痛いほど思い知らされた。
きっと本心の俺は寂しくてしょうがないんだと思う。
できることならあの出来事はなかったことにして、先輩の教室に遊びに行きたい。教室に遊びに来て欲しい、一緒に時間を過ごしたい。
だけどそれは無理な我が儘だ。俺は大雅先輩に隣を譲り、彼女の後ろに立つって決めたから。
支えられる友人になると決めたから。
今は無理でも、いつか、友人として笑える日がきたら、きてくれたら。