前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「大体、向こうの親が勝手なんだよ。娘と別れさせておいて、今後も一友人として支えてくれ?
無茶言うなって。空だって手前のことで一杯なんだ。約束を守れなくとも、それはお前が罪悪感を抱くことじゃない。二階堂先輩もこの前、お前に激怒していたけど、勝手言うなって話だよな? どいつもこいつも空に期待し過ぎだ。お前なんてこーんなに小さい人間なのにな」
豆粒サイズだと指で表現するアジくんは、俺自身にも自分を過大評価しないこと、としっかり釘を刺してくる。
誰彼全員を面倒看切れるほど器が大きいわけじゃないだろ? 相手に問われ、小さく首肯した。
「誰でもそうだよ」手厳しいことを言った直後、アジくんはお前だけじゃないと微かに頬を崩す。
「お前が御堂先輩を好きになっても、それは裏切りじゃない。不本意な決着であろうと、向こうだって勝手に婚約したんだ。てか、先に婚約したのは向こうじゃんか。裏切りを口にするなら、向こうも一緒だ」
「いつまでも引き摺るより、御堂先輩の良いところを探していった方が時間も得だよ。僕等は応援しているからさ。財閥界はよく分からないけど、まあ、力になれることがあれば相談に乗るし」
これだからフライト兄弟は好きなんだよな。
悪いところは悪いと言ってくれるし、助言してくれるところはしてくれるんだから。
教科書等を持って立ち上がった俺は「王子も可愛いところがあるしね」と、ノロケを口にして笑声をもらした。
傍にいるだけで元気をもらえるのだと言い、二人も早く彼女を作ったらいいよ、と嫌味を吐いた。これもご愛嬌だろう。
「うっわ最悪!」エビくんが俺の脇を小突き、「リア充滅べ!」アジくんが首を絞めてきた。
「ごめんって幸せで!」
ギブアップを口にする俺に、いっぺん死んで来いとハモられてしまう。
他愛もないやり取りが心を軽くした。
とにもかくにも連日のように痕が付けられるようになったことで、俺が誰の物になっているのか目で確認できるようになった。
改めて婚約しているのだと思い知り、俺はもっと勉学に励みたいと思った。少しでも御堂先輩に見合いたいから。
また彼女のことをもっと知りたいと思った。
小さなことでもいい。彼女を知って好きになりたいと思うようになったんだ。
片隅で鈴理先輩の姿が脳裏を過ぎったけど、フライト兄弟の言うとおり、俺の器にも限界がある。
彼女にも婚約者がいることだし、面影は蓋をしておこうと自分に言い聞かせた。彼女はもう二階堂家のものなんだから。
婚約していると伝えてから、彼女の姿をめっきり見なくなったしな。
向こうが俺を避けているのかも、
「1年C組豊福空! 空はいるか! 竹之内 鈴理がわざわざ、大切なことだから二度言うがわざわざ足を運んで来た! あんたに会いに来たぞ!」
避けて、避け……、あれ?