前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
鈴理先輩が俺の隣に?
え、座っていたって……。
驚愕する俺に、「ずっと傍にいたみたいだぜ」俺達が来たら、後は宜しくと頼まれたとアジくんが肩を竦める。
言葉を失った。
ずっと傍にいてくれたって、もしかして俺が此処で眠りこけている間、ずっと?
夢路を漂流していた俺なもんだから気付く術すら持てなかった。
改めて鈴理先輩の背を目で追う。
早足で歩く彼女の背は見る見る遠ざかっていく。
なんで先輩が俺の隣に腰を下ろしていたのか、俺には知る由も無い。
けれど一つ、分かることがある。
先輩、俺、俺を―…。
「鈴理先輩! その携帯で俺を隠し撮りしたでしょ! そうでしょ!」
ご機嫌な足取りで去って行く鈴理先輩の背に向かって俺は吠えた。
だってブレザーを持つ手とは反対の手でご機嫌に鼻歌を歌いながら携帯を操作している鈴理先輩の姿を見たらっ、付き合い上、嫌でも分かっちまうよ!
あの人、ぜぇったい俺の写メ撮りやがった!
俺の怒号が耳に届いたのか、鈴理先輩が足を止めて振り返ってくる。
起動した携帯の画面を俺に見せ付けながら、「残念だったな」写メではない、とウィンク。
視力の良い俺は画面に映っているものが映像だと気付く。
ちょ、まさか。
「あたしが撮ったのはムービーだ。コレクションとして保存しておくから安心しろ」
尚のこと悪いじゃないっすか!
ナニ考えているんだ、あの人!
「と、盗撮っす!」
「何を言う。中庭で無防備に寝ていた空が悪い。
それにこれは盗撮ではなく撮影だ。
あんた、野良猫のムービーを取る際、猫に許可を求めるか? 求めないだろ?
よってあたしの行為も許されるのだ。
あと隠し撮りではない。堂々とあんたの前で携帯を構えた」