前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


気付かない空が悪いとシニカルに笑い、今度こそ彼女は校舎に姿を消してしまう。

残された俺はなんで寝ちまったんだろうと頭を抱える。

油断していた。
まさか鈴理先輩から撮影(という名の盗撮)をされてしまうなんて。

手を出さないって約束はどーしたんっすか。


いや、あの人のことだから多分、「撮影しただけ。手は出していない」とか言うんだろうけどさ。

これが御堂先輩の耳に飛び込まないといいんだけど。

あの人、わりと意地の悪い仕置きをしてくる傾向があるから。

さすがは攻め女だよな。


ついでに鈴理先輩、俺の人権は無視っすか。

俺は野良猫と同レベルなんっすか。


小さな欠伸を零して頭部を掻いていると、フライト兄弟に微笑ましいと笑われてしまった。

盗撮行為に微笑ましいと言われてもあまり嬉しくないのは、俺の認識が間違っているからだろうか?

油断も隙もあったもんじゃないと吐息をつき、俺は散らばった本達をかき集めて立ち上がる。
 

次いで、迎えに来てくれたフライト兄弟に礼を言った。

最近の俺は勉強に集中し過ぎて、午後一発目の授業に遅れがちだった。

担当教師からも注意を受けていたところだったから、フライト兄弟が気遣って俺を探しに来てくれたんだろう。


気遣いは本当に助かる。


今日なんて居眠りしちまったからさ。

二人が起こしに来てくれなかったら、俺は午後の授業をすっぽかしていたと思う(それとも鈴理先輩が起こしてくれたのかなぁ)。
 

「俺達は別に気にしちゃないけど、お前は大丈夫か? 寝れてないんだろう?」


校舎に足先を向けながらアジくんが心配の念を口にしてきてくれる。

「今は三、四時間睡眠かなぁ」

ちょっとシンドイや、俺は苦笑いを零して有りの儘の感情を吐露する。

二人になら気兼ねなく本音を吐き出せた。


「俺、六時間程度は寝ないと頭が回らないんだ。睡眠を多く取る方だから、ほんと、毎日が眠くてねむくて」


そう二人に零すと、「だよねぇ」エビくんはシンドそうだもん、と眼鏡のブリッジを押して眉を八の字に下げた。
 

なんで俺がこんなにも睡眠不足かっていうと、先日から淳蔵さんの命令で家庭教師をつけられたからだ。

じき財閥の子息(っていうのかな?)として公の場に出しても恥ずかしくない男になるよう、淳蔵さんが今以上に勉強しろとご命令。

異論は許されないから、当然俺はそれに従っているわけなんだけど、毎日の勉強の濃度がやたら高いんだ。
 
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