前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「うむ。ケータイ小説ではこういう場合、許婚が更なる意地悪をして主人公を追い詰めていくのだが。
そしてその主人公には白馬の王子様のような、イケた好青年が求愛を迫ってッ…、それが玲か! 玲なのか! あいつは好青年などではないぞ! 寧ろお腹真っ黒くろだ!」
「おい、戻って来い。俺、置いてきぼりだ」
「だがしかーし! 王道展開だと必ずカップルはよりを戻すのだ! あたしが読んでいる俺様小説だって、不良総長小説だって、禁断の先生×生徒だって最後は結ばれる!」
王道こそが万人受け。他のカップルと結ばれるなんぞ邪道の極み!
シンデレラで例えるならば、主人公のシンデレラではなく義姉と王子が結ばれるものだ。
あんなに意地悪をしていたというのに、挙句、シンデレラから王子を奪う。どんな悪女だ! 子供も泣くぞ!
白雪姫でいえば白雪と七人の小人が結ばれるようなものだ。
おっと彼女はまさしく逆ハーレムだな。
王子はそっちのけで小さな男達とウハウハ。
うむ、それはそれで白雪姫にとって幸せかもしれん。
小人の年齢が五十は過ぎていそうだが。
人魚姫でいえば……、どうなるんだ? 王子と人魚姫は結ばれない。人魚姫は泡になるのだが。
………、とにかくあたしと空は王道カップルなのだ。
何故ならば先に結ばれ、あっはんうふんとカップルイチャコラをしていたのだから!
つまり後で出来上がった玲と空はマイナーカップルなのだ!
公式カップルはあたしと空で固定だと言えよう。
王道カップルとしてあたしは王道に一旗挙げさせる!
「空、待ってろ! あんたを鳴かせるのはあたしだ! 玲にキスされようが痕をつけられようがせ、せ、せ…、セックスされようが、最後はあたしが勝つ!」
立ち上がって熱弁する鈴理がチラッと大雅に視線を流す。
あきれ返っていた彼は鈴理の視線に気付き、「あーはいはい」すっげぇ演説でごぜぇましたよ、と拍手を送った。投げやりである。
褒め言葉(とは言いがたいが)を頂戴した鈴理は得意げな顔で踏ん反り返るが、はたっとネガティブなことを妄想して血の気を引かせる。