清水の舞台
二人の客を送り出し、倉田が戻ってきた。

「こんな感じでやれば、お客さん増えていくよ」

真理子は倉田に教授した。


「はい。よくわかりました。凄いですね。一回の会計で三万円なんて僕、はじめてです。勉強させてもらいました」

倉田は素直に真理子を誉めた。


「じゃあ、私も帰るね」


「はい。ありがとうございました。早く家賃を払えるように頑張ります」

とさわやかに倉田は言った。


「倉田さんは彼女いてるの」

帰り際、真理子が聞いた。


「はい」

照れながら倉田は答えた。


「水商売の男は、女がいるって言ったらダメよ」

そう言うと真理子は店を出た。


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