清水の舞台
「倉田君、“捨てる神あれば拾う神あり”だよ。実は、ここにいる娘は京都の老舗の漬け物屋に嫁いでいてね、そこが三千万を川本工務店に融資してくれると言うのだよ」

川本社長が融資打ち切りを簡単に受け入れた理由はそれだったのだ。

「いやだわ、お父さん。そんなことまで言って」

社長の娘はそう言った。

年こそ倉田より二十は上だろうが、顔つき、肉厚、声質、話し方、香、全てが倉田のタイプに合致した。

確かに、佐藤由美は美しい女で品があった。

「由美、倉田君をガレージまでお送りしなさい」

社長はもう倉田とは話すことがないと思い、娘に指図した。

「はい」

娘は返事した。


普通ならここで、結構です、と言うべきところ、倉田は佐藤由美と話がしたかったので遠慮はしなかった。


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