清水の舞台
『ルー』がオープンして三ヶ月、家賃が滞りだした。

一階と二階をあわせて月々十万円の家賃。

真理子の予想した通り、なかなか流行らないのだ。

倉田は、家賃を取りに来た真理子にすまなさそうに何度も頭を下げた。

「なんとか、もう少し待っていただけませんか」

倉田は頼み込んだ。

松木家は別に家賃をあてに生活をしていたわけではないし、家賃が滞ることも予想していた。

いつでもいいですよ、母にもうまいこと言っておきますので安心してください、と倉田の予期しなかった返答をした。

倉田は安堵し、礼をのべた。

真理子は、せっかく来たんだから少し飲んでいきますね、と言った後、またあの沈黙が来るのかと思い少し後悔した。
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